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SIer→Web系の転職に成功する人“5つの特徴”とは?

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Forkwellプロダクトマネージャーのおおかゆかです。

弊社が運営する ITエンジニア向け転職サイト「Forkwell Jobs」と転職エージェント「Forkwell Agent」では、毎月多くの方がサービス経由で転職されています。両サービスで扱っている求人のほとんどが自社サービスやプロダクトを開発・運営しているいわゆる「Web系企業」によるものであるため、転職された方の入社先もほぼ10割が Web系企業。

そして IT企業をざっくり受託開発の「SIer」と自社サービスの「Web系」に分けるとすると、Web系への転職成功者の方の前職は、Forkwell Jobs でも Forkwell Agent でもなぜか SIer・Web系ほぼ半々。巷では「SIer から Web系への転職は難しい」「SIer から Web系への転職が多かったのはソシャゲ最盛期だけ」といった声もありますが、少なくとも弊社の観測範囲ではそんなことはありません。

そんな SIer→Web系の内定を勝ち取っていく方々の様子を日々拝見するいっぽうで、自身が弊社のエンジニア採用責任者として、たくさんの SIer 在職の応募者の方々と接する機会があります。今回はそんな私の視点から SIer→Web系の転職に成功しやすい方の特徴についてお話ししていきたいと思います。

【特徴1】年齢が26〜28歳のゾーン

いきなり年齢の話になってしまいますが、トレンドとしてはっきり出てしまっているために最初に挙げさせていただきました。こと SIer→Web系の転職においては、転職成功者の年齢は20代後半というのが圧倒的に大きいボリュームを占めています。

ちなみに Web系→Web系転職では、30代前半から中盤にかけてが最も多くなっています。ですのでこれは単に「転職するなら若いほうが有利」という問題ではありません。これを解釈すると、Web系企業で求められるある資質が SIer では磨かれず、そしてそれは20代を SIer で過ごしてしまうとその後もなかなか身につかないと採用側が判断しているということになるでしょう。

弊社でも応募されてこられる SIer 在職の方が多くいらっしゃいますが、30歳を超えると採用に至る確率が20代の 1/3 くらいに下がります。これは別に「若いほうが言うことを聞いてくれそう」だとか「若いほうが払う給料が少なくて済む」だとか考えているわけではなく、単純に求める資質を満たしておらず、将来の伸びしろも見込みにくいと判断している結果です。

私自身、新卒で SIer へ入社してその後に派遣を経て、初めて Web系企業に転職したのが27歳のときでした。そして Forkwell の開発メンバーも実は前職が SIer の人が多いのですが、やはり採用時26歳〜28歳というのが最大勢力です。

その「30歳を超えると身につきにくい、SIer では磨かれず Web系企業で求められる資質」というのはいったい何なのかというのが、まさにこれから挙げる2番目以降の特徴になります。しかし逆に言うと、29歳以上であってもこれらの特徴が身についていることをアピールできて、それで相手を納得させられれば採用の確率も高まるわけです。ですのでこの年齢ゾーン以上の SIer在職者の方でも、それを戦略として採り入れればあきらめる必要はありません。

【特徴2】技術が好きでプライベートでも自主的に取り組んでいる

ネットでは定期的に「エンジニアは業務外でも勉強するべきか否か」というテーマで盛り上がっては沈静化を繰り返してますが、先日も「業務時間外で勉強をしなければいけない理由」という記事が取り沙汰されていましたね。

しかし、こと Web系企業においては、プライベートで業務以外の技術に取り組むのは当たり前という風潮です。(ここで「勉強」という言葉をあえて使わなかったのですが、それは個人的に技術は「勉めて強いられる」ものではなく、好きだから楽しんでやるものだと考えているからです)
そもそも CTO からしてそういうギークの人たちがほとんどで、彼ら彼女らが価値観の近い人たちを採用してチームが出来上がっているという現実があります。

別にそれは単に仲良しチームを作るためではありません。多くの Web系企業では開発プロセスに極力、属人性をなくすために、コードレビューやソフトウェアテストが徹底されます。ですので他のメンバーと同レベルの可読性やパフォーマンスを実現したコードを書くことが求められます。変数名が a1, a2, a3 だったり、DBのテーブルカラムが重複していても SIer では怒られないかもしれませんが、ちゃんとした Web系企業では許してくれません。

そんなところに入っていこうとすれば、自分もそのチームメンバーたちと同じ種類の人間であることを証明する必要があります。しかしここで問題になるのは、「意欲」だけではだめだということです。私が面談時によくする質問で「最近注目している技術はありますか?」というのがありますが、よく陥りがちなパターンはこんな感じ。

私:「最近注目している技術とかありますか?」
応募者:「関数型言語が気になってます。Scala とか」
私:「へー、Scala。Scala のどこが好きですか?」
応募者:「えっ? いや、まだちょっとチュートリアルを見始めたくらいで…」
私:「そうですか。勉強会とかには参加されてないんですか?」
応募者:「…いえ、特には……」

「技術が好きでプライベートでも自主的に取り組んでいる」ことを具体的な形で示しましょう。その技術のどこが好きかを体系的に語れる、読んだ本のタイトルとその感想が言える、勉強会に参加している、何か作ったものが GitHub に上がっている。もしそれにスターが2桁以上ついていたりすれば、採用したい気持ちにチェックがかかります。

ここまで読んで「やばい全然ムリ」と思った方へのアドバイス。SIer では社内外での分業が進んでいてシステムや開発工程の一部分しか業務ではタッチできず、そんなアンコントローラブルな環境を延々と強いられるため学習性無力感が職場に蔓延し、「業務以外では PC をさわりたくない」なんて人もめずらしくありません。私も SIer入社最初の2年間はそんなでした。でもあるとき自宅の PC に Linux をインストールして何でもできる環境を手に入れたときに、目の前がパッと開けました。システム全体の root権限を手に入れた全能感と、業務で断片的に頭に入っていた知識がつながっていく嬉しさが、私を無力感の呪縛から解放してくれました。

今なら Raspberry Pi を買ってきてイチから環境を構築してみるとか、いいかもしれません。子供がブロックを積み上げてお城を作っていくように、小さくてシンプルで把握しやすいものから始めて、取り組むのが楽しいと思える技術を見つけてみてください。

【特徴3】プロダクトに愛着を持ってくれそう

CTO の知人に、「自分の会社の求人には、あまり技術のことばかり詳しく書きすぎないようにしている。技術だけが目的の人に来てもらっても困るから」と公言している方がいます。その行動については個人的には賛成しかねるのですが、いっぽうでその理由については多くの開発責任者の方が共感できるものだと思います。

一般的な面接時のお約束の質問として「弊社への志望理由を聞かせてください」というものがあります。また弊社求人の話になりますが、この質問に対して「Rails で開発できるから」と答えられる方がめずらしくありません。その答えが返ってくると、「Rails 使っている会社なんてたくさんあるんですから、別に弊社じゃなくてもいいじゃないですか」と思わず口に出してしまいそうになります。

特にスタートアップや上場まもない会社というのは事業のミッションや実現したいビジョン、そしてそのための会社のカルチャーづくりというものに対して非常にこだわっています。採用する側としては正直な話、これらに心の底から共感してそれを熱く語ってくれる人材なら、多少のスキル不足には目をつぶってもいいとさえ考えています。

エンジニアにとっては、ひょっとしたらこれは納得しにくいことかもしれません。転職活動をされているエンジニアの方々を見ていると「スキルさえあればどの会社にでも転職できる」と考え、不採用になったら「純粋に自分のスキル不足だった」と考える傾向があるように思います。しかし一般的な採用の場において、実はスキルというのはスタートラインに立てる必要条件ではありますが、それだけで採用が決められる十分条件ではありません。

Ruby作者の Matz が Salesforce のチーフアーキテクトになったり、Python作者の Guido van Rossum が Dropbox に入社したりといったケースは、例外中の例外。彼ら並みに誰もが認める技術力とエンジニアコミュニティでの圧倒的な知名度や求心力を備えているなら話は別ですが、現場でプロダクト開発に携わるスタッフの採用においては、何よりもチームの一員として会社のビジョン実現に貢献してくれる人材が求められます。

ですので、たとえアプローチのボタンの名前が「まずは話を聞きたい」とかであったとしても、「どれどれ、まあそちらの話を聞かせてくださいな」と何の準備もせず出かけていくのは絶対に NG。求人のスキルがマッチしていることは当たり前として、ちゃんとその事業について調べ(といっても普通は求人に書いてあるのでちゃんと読む)、自分が興味を持てるサービスかどうか、またミッションやビジョンに共感できるかどうか、さらには社長の人物像(=社風に直結する)も調べた上で、自分自身のその会社に対するモチベーションを醸成してから足を運ぶようにしましょう。

【特徴4】自分で仕事が見つけられる自主性がある

SIer と Web系企業の一番の違いはここかもしれません。SIer ではひとつのプロジェクトでも社内外での分業が進められており、「A社にはシステムのこの部分が任されていて、甲チームが受け持つのはこの工程で、でαさんはその内ここの担当ね」と細分化された業務が充てがわれることが多いようです。しかし Web系ではひとりのエンジニアがヒアリング、仕様策定、設計、実装、テスト、デプロイ、インフラ構築・運用までをも担当することがめずらしくありません。

そればかりか会社によっては、「この KPI を達成するために、調査から施策の洗い出し、リリースと効果の追跡までお願い」と丸投げされることもあります。そういった環境では、一介のエンジニアであっても自分の仕事を自分で見つける必要に迫られます。そうなると「たとえ結果が出なくても、それは開発した自分ではなく企画した人のせい」のような態度は社内カルチャーとして許されないというより、論理的に正当性を持ち得ません。

ですので、Web系企業ではいわゆる「指示待ち人間」が非常に嫌われます。面談の場で「あ、この人は指示待ち人間なタイプだな」と思われたら、そこで試合終了です。しかも Web業界人は「SIer には指示待ち人間が多い」というバイアスを持っていることが多いので、スタート時点でそのマイナスを挽回する必要があります。

これを払拭するためには、いかにこれまでの業務の中で積極的に自分が主導権を握って何に取り組んだかをアピールするのがいいでしょう。たとえば会社で自分が Git や CI を導入しましたとか、社内勉強会を開いて有志を集めて業務以外でこんな技術に取り組みましたとかといったエピソードがあると効果的です。

また採用側では、自主性を見るために過去の業務について詳しく突っ込んで聞くことがよくあります。システム全体がどんな技術で構成されているとか、なぜその技術が採用されたのかとかを聞かれて答えに詰まった場合、自分が担当するシステムや工程の一部分にしか興味がなかった「指示待ち人間」と判断されてしまいます。

【特徴5】コミュニケーション能力がある

「ここでもコミュニケーション能力かよ! コミュニケーション取りたくないからエンジニアやってるのに」という声が聞こえてきそうですが、コミュニケーション能力はエンジニアの業務でも非常に重要です。ただしここで言う「コミュニケーション能力」とはアドリブで30分以上話し続けられるとか、顔が広くて Facebook のフレンドが1,000人を超えているといった類いのものではなく、「エンジニアに特化したコミュニケーション能力」です。

ではその「エンジニアに特化したコミュニケーション能力」とは何か。難しいことではありません。「他のチームメンバーに嫌われず、スムーズに意思疎通できて、気持ちよく仕事ができる」ことです。

たとえば初めて Pull Request に出したコミット内容に、他の皆から20件以上の指摘がついたとします。それを「こんな細かいことまで文句付けんなよ、めんどくせーな」などと思わず「ああ確かに指摘された通りだわ。まだまだ学べることがあるなぁ」と思えるかどうか。たとえば仕事のチャットでのやりとりで相手と険悪な雰囲気になりそうなとき、絵文字を使って表現を和らげることができるかどうか。その他、わからないことを人に聞かずに1日中調べて時間を無駄にしたりしない、非エンジニアのスタッフと話してて「こんなこともわからないの?」と馬鹿にしたりしない、他人が好きな技術を Disらない、etc. etc.

くだらないと思いますか? でも Google では社員採用の最終面接に「エアポート・テスト」というものがあり、「飛行機が欠航になって、空港で一晩いっしょに過ごさなければならない。そのとき、夜通し語り明かせる人かどうか」という基準でチーム全員から OK が出ないと採用されないといいます。また弊社でもエンジニアを採用する際、開発メンバー全員が候補者と会って1人でも「あの人とはやっていけなさそう」という意見があれば、そこでいったん選考にストップをかけ、その引っかかっている部分を徹底的に話し合い、それでも懸念点が解消されなければ不採用になります。

最後に

「SIer→Web系の転職に成功する人 5つの特徴」、いかがだったでしょうか? 5つ全てを高いレベルでそなえることは難しいでしょうが、面談・面接の場でどんなポイントを見られているかを知っておくことは、採用の成功率を上げるのに役立ちます。自分は5つのポイントのどこが強くてどこが弱いかを自覚した上で、手っ取り早く埋められる弱点は埋め、強みを強調したアピール戦略を立てて転職活動に臨みましょう。

Forkwell Jobs でも準備不足のまま蛮勇で十数社も突撃して派手に玉砕される方が実はけっこうめずらしくなくて、そんな方々に届くといいなと思って今回この記事を書きました。